ケイマン諸島籍の企業が多い理由

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こんにちは、ぐだおです。
今日はケイマン諸島籍の会社がなぜ多いのか、その理由について書いていきたいと思います。



アメリカ市場にIPOする会社を整理していると、新興国企業、特に中国系企業の多くがケイマン諸島籍、つまりケイマン諸島で登記された企業が多かったんですよね。実態は中国人が設立して中国に本社をおき中国でメインに活動しているのにもかかわらず、籍だけはケイマン諸島なんです。不思議ですよね。気になりますよね。というわけで書いていきます。

中国などの新興国の企業がケイマン諸島籍になる理由

ケイマン諸島はカリブ海に浮かぶ島

まずはケイマン諸島の情報をざっくり紹介します。定番のwikipediaへのリンクを貼っておきますね。

ケイマン諸島 - Wikipedia

wikipediaによると

ケイマン諸島(ケイマンしょとう、Cayman Islands)は、西インド諸島を構成する諸島の一つ。イギリスの海外領土であり、グランドケイマン島、ケイマンブラック島、リトルケイマン島の3島からなる。人口は57,570人(2012年)で、首都はジョージタウン。

西インド諸島に馴染みがないと思いますので、Google mapでだしときます。キューバのすぐ南のカリブ海に浮かぶ小さい島々ですね。

上記のようにケイマン諸島はイギリス領なんですね。ただイギリス領とはいえケイマン諸島は自治権を持っており独自の法もあります。が、
「社会政策は全くと言っていいほど充実しておらず、福祉国家以前の夜警国家であるなどと言われることもある。 」ということです。

ケイマン諸島で設立する会社が多い理由

前項で、ケイマン諸島がカリブ海に浮かぶイギリス領の島であることが分かりましたが、その結果、なぜ中国の会社がケイマン諸島で設立されるのかますます謎は深まりましたね。いや〜本当に不思議ですね。
これ以上引っ張るのも何なので、ここで一気にネタバラシしときます。
wikipediaのケイマン諸島の「経済」の項目に非常に興味深いことが書いてあります。

ケイマン諸島は西インド諸島の中では生活水準が高い。主要産業は観光で、古くからスキューバダイビングの名所として知られる。タックス・ヘイヴンであるためオフショア・バンキングも盛んで、ここに資産運用会社や特別目的会社(SPC)を置く海外の金融業も多い。しかし租税回避やマネーロンダリングにケイマン法人が使用されることも多いため、OECDはケイマン政府に対し、透明性と実効ある情報交換を2005年までに実現するよう要求している。2010年には、英国のシンクタンクにより、世界第34位の金融センターと評価されている。

経済とか金融に詳しい人なら「ケイマン諸島」という文字を見た瞬間に分かったと思いますし、そうでなくてもカリブ海でピンときた方も多いと思います。
ケイマン諸島は同じカリブ海に浮かぶ英領バージン諸島とならんで有名なタックス・ヘイヴン=租税回避地です。ちなみに英語だとtax havenとなって、heavenではないのでご注意を。僕も学生の頃はヘブンだと勘違いしちゃってました….。
タックスヘイヴンといえば最近だとパナマ文書で話題になりましたね。ようは課税が著しく軽減されたり完全に免除される国や地域のことです。

ケイマン諸島で会社を設立するメリット

具体的にケイマン諸島で会社を設立するメリットを見ていきましょう。
参考にしたのは以下のページあたりですね。

税金なしの天国?タックスヘイブン「ケイマン諸島」のメリットは?

皆さんおわかりだと思うので一言で言ってしまうと、タックスヘイヴンなので、ケイマン諸島籍の会社はどんなに利益を上げたり、資産を持っていようと税金は非課税です。法人税ゼロです。これにつきます。
あと、単純に設立の手続きも簡単で、費用も安いというメリットもあります。
他にも銀行取引の内容が法律で秘匿されることなどが上げられます。
ちなみに、上記のページによると

ケイマン諸島には、法人6万社が登記してあり、ウグランド・ハウスという5階建てのビルには18,000社もの会社登記がある

実際にはウグランドハウスはただのポストオフィスらしいですがね。
このあたりからも分かるように、ケイマン諸島籍の会社というのは基本的にはケイマン諸島での税制メリットを得るためだけペーパーカンパニーだということです。
税逃れで印象悪いですが、ベンチャーならそれもあまり問題になりませんし、メリットの方がはるかに大きいですね。

ケイマン諸島で会社を設立する中国特有の事情

PDFファイルになってしまいますが以下のファイルによると、中国に特有の事情もあるようです。

クリックして69masuda.pdfにアクセス

中国の国有企業がケイマンなどに投資し海外企業として登記し、「ケイマン企業」として中国国内に投資する。そうすることで、中国における外資系企業としての優遇策を受け経営コストを削減するのが狙いとしたものがケイマンへの直接投資額が多い背景の一つと考えられているためである。

実際にケイマン諸島籍の中国企業には以下の特徴があるということです。

  1. 中国で創業して数年後(早いものは1年後)にケイマンに進出している。ケイマンに持ち株会社を設立し、中国本土にある企業を傘下にしている。
  2. 持ち株会社の株式を公開し証券市場に上場している。
  3. ケイマンの持ち株会社は登記されているだけで実態がない。NASDAQ市場などに株式上場した際、SECに提出した資料(SECの様式F-1A等)には、登記所在地がケイマンであっても連絡・照会先(住所、電話番号など)は中国の事業活動拠点である。
  4. 持ち株会社をケイマンに設立し、米国の証券市場に上場する背景は、次の点と考えられる。1)初期段階からの資本調達ができる。ベンチャー企業が多く事業拡大にはスピードと投資が重要となる分野であることから、資金調達目的のためと推測される。ケイマンの持ち株会社をニューヨーク市場に上場しているのは私有企業である。しかも、起業化の初期段階に近い。このことは、国有企業と異なり中国国内での資本市場での資金調達が容易でない現実を反映している。2)知名度やブランド力の向上を図る。NY市場に上場するのは、需要家などが多い国の証券市場に上場することで知名度の向上を狙う。医薬品、太陽光発電などの分野の企業に目立つ。3)信頼性を高めること。米国市場の上場企業に要求されるSOX法(“the Sarbanes-Oxley Act” of 2002:「上場企業会計改革&投資家保護法」)の下での財務諸表を作成することで投資家や取引先の信頼を高める。
  5. ケイマン籍にして中国に投資をすると、中国では外資系企業として扱われ外資系企業の優遇策が得られる。ケイマンに設立した持株会社が保有する中国国内の事業会社、新たに設立する事業会社、中間的企業は外資系企業としての優遇策を受けられる。なお、外国籍の中国系企業による対中国投資は、“Round Tripping”と呼ばれている

だんだん中国で企業を作るときにはケイマン諸島で始めないといけない気がしてきました。
追加でこんな事情もあるようです。

中国関係ビジネスを行う企業にとって香港、特に香港証券市場との関係である。ケイマン籍の企業は中国や香港の登記企業と同様に香港市場でのIPO(Initial Public Offering:証券市場における未上場企業の上場に伴う公募増資や株式の売買)が可能である。ケイマン、バーミューダに登記した企業は香港市場でのIPOが可能である。一方、米国のデラウエア州の登記企業や英領バージン諸島の登記企業には認められていない。

何と、デラウエアとかバージン諸島といった他のタックスヘイヴンの企業では香港市場に上場できないのです。

ケイマン諸島籍の会社へ投資する際の注意事項

2011年とちょっと古い情報ですが、気になるページを見つけたので、ケイマン諸島籍の会社へ投資する際の注意事項を書いていきます。
この項については以下のサイトを特に参考にしました。

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まず、ケイマン諸島籍の会社には「情報開示不足」というリスクがあるということです。

ケイマン企業はニューヨークで取引される米国預託証券(ADR)を発行することができるが、米国の法律は適用されない。米証券取引委員会(SEC)とニューヨーク証券取引所は大抵、上場企業の本国の規則に従う。こうしたケイマン企業は中国で上場することはできないが、調査会社ディーロジックによると、2000年以降、米国でADRを通じて240億ドルを調達している。
もちろん、米国に上場しているすべての中国企業の情報開示基準が甘いわけではない。米国上場を目指していた中国石油天然気(ペトロチャイナ)(0857.HK)(601857.SH)(NYSE:PTR)や中国電信(チャイナテレコム)(0728.HK)(NYSE:CHA) など多くの中国企業は2000年代初めまで香港で並行上場していた。この場合、SECはケイマン諸島の規則よりもはるかに厳しい香港の規則に従うことになる。

たとえケイマン諸島の法律が企業に迅速な情報開示を強制していなくても、そうしている企業もいる。例えば、中国の検索エンジン最大手、百度(Baidu.com)(Nasdaq:BIDU)は米国に上場してから、迅速な情報開示を行っている。

という風に真面目にやっている企業もある一方で、中国企業の会計操作・虚偽開示が実際に露見した例もあり、中国上場企業に対する不信は根強いものがあります。実際に過去に、米国証券取引委員会(SEC)などがこれを問題視して会計不審に関する調査を行ったこともあります。また、過去に上場廃止に至った中国の会社も決して少なくありませんし、上場してても株価が暴落したものもあります。この辺の事情から、私も中国系の会社は基本的にIPO後に株価が上がっているイメージがなく、よっぽどでない限りあえて手をだすものではないという認識を持っています。

おわりに

さて、この記事を読むとケイマン諸島籍と聞くとピンときて身構えるようになったのではないでしょうか。それは投資をしていく上で大事なことだと思います。Yahooファイナンスのページにわざわざ「ケイマン諸島籍の会社です」と入っているのはこういうわけです。この株に投資する上で大事な情報ですよってことです。
今後は情報開示のルールが厳しくなっていくのかもしれませんが、現状では注意をしていた方が良さそうです。また、タックスヘイヴンも今後は規制が厳しくなってきているようなので、今後はIPOしていくケイマン諸島籍の会社の比率は減っていくかもしれません。が、会社設立とIPOにはギャップがあることを考えると、しばらくはそれなりに見かけることになると思うので頭の片隅には置いておきましょう。では。。。

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