【書評】「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」橘 玲

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本書は2002年に刊行された本であり情報としては少し古いですが、この本が指し示す「お金持ちになる」ための根本的な考え方は不変です。また現状とどう異なるのかを知ることは本書の主旨に通じるものがあり、そこまで含めて理解することにより本書が伝えたいメッセージをより強く受け止めることができるのではないのでしょうか。よくあるトンデモ本ではなく、データ・事実に基づいてお金持ちになる確率をあげるために外さない方が良いポイントや資産を増やすための基本的な考え方が論理的に良くまとめられており、入門編として非常に読みやすい本だと思います。ただ、あくまで概要に過ぎなので、より深い知識を得るためにはそれぞれの項目の専門書を読む必要があります。

2015年にでている新版ではおそらく情報がアップデートされていると思うので、近いうちに読んでからこの書評もアップデートするつもりです。

この2015年版は2017年に文庫版もでているので、こちらの方が安くて手に入りやすいので今買うならこっちの方が良さそうです。

まず、本書のタイトルにもある「黄金の羽根」(文中では「黄金の天使の羽根」)とは「制度の歪みから生じる恩恵」を指す言葉です。

この黄金の羽根を拾うためのキーワードとして著者は以下の5つを挙げています。

  1. Goal: 真に自由な人生を生きること。
  2. Liberty: 何ものにも束縛されない状態
  3. Financial Independence: 誰にも、何ものにも隷属せず、自由に生きるのに十分な資産
  4. Shortcut: 最短距離で目標に到達できる、少数の人しか知らない方法。
  5. Golden Feather: 制度の歪みから構造的に発生する“幸運”。手に入れた者に大きな利益をもたらす。

つまり、Goalである自由な人生を生きるためにLibertyとFinancial Independenceをいかに得るか、そこへ辿り着くためのShortcut近道はGolden Featherを効率的に活用することだというわけです。

今の時代は産業社会から知識社会あるいは情報化社会へと変化してきており、情報は一部の特権層だけでなく一般に瞬時に共有され得ます。しかし、その情報を得て有効に活用できる人はごく一部です。この情報とは本書では「黄金の天使の羽根」のことをさしますが、この “黄金の天使の羽根はうかうかしているとあっという間になくなってしまいます”。実際に、本書は2002年つまり16年前に刊行されたものであり、この16年間の間に本書で紹介されている黄金の天使の羽根はほとんど失われており、またはあったとしても簡単に手に入らないように改正されています。つまり、あくまで黄金の天使の羽根は制度の歪みであり、その歪みが無視できなくなるほど問題になった(あるいは世論による批判を受けたりした)場合には、いずれ修復されてしまうということです。だから、ごく一部の人しか知らない時点で情報にリーチし、有効に活用しなければならないのです。

本書の刊行後に制度が改正されたものを挙げていくと、例えば、失業保険の給付条件はより厳しくなったし、国民年金基金の利回りも当時の4%から1.5%に減額されています。とくに、国民年金基金は加入時の利回りが生涯にわたって確定しているので、最初に利回り5%で加入した人は低金利の今もそのまま5%になるという運用上の問題が生じており、まさに歪みが顕在化しています。

この本は、「確実に金持ちになる方法など、この世にはありません。」。と最初に記していますが、資産を築くために外してはいけない基本的なポイントがよくまとめられています。特に日本人がはまりがちな”持ち家信仰”と”高額な生命保険”の問題点については丁寧に書かれています。もっと若いうちにこの辺の仕組みは理解しておいた方が良かったなと感じます。あと、多くの資産家はいかに節税をするのか、というのをよく考えているという意見にも同意します。日本は個人とくに給与所得者への社会保険料も含めた税率が高い国です。この日本で生きていく上で、どうすれば「黄金の羽根」を拾っていけるのか、基本戦略を知りたいという金融リテラシーの低い初心者は読んで損はないでしょう。中級者以上の方にとっても頭の整理にはなると思います。これからお金を稼ぐような若い人には特にオススメです。

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