第一回:教育資金贈与信託:制度概要と利用すべき人の基準

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こんにちは、ぐだおです。
諸事情により教育資金贈与信託なるものを開設することにしたので、それについて色々と調べたのでここに情報をまとめておきます。長くなったので全3回に分けてアップします。
今回は第一回:制度概要と利用すべき人の基準です。

第二回:教育資金贈与信託:主要銀行サービス比較

第三回:教育資金贈与信託:口座開設方法と払い出し手続き

教育資金贈与信託とは?

まず、教育資金贈与信託は「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」に則って作られた金融商品です。

教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置

「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」についての詳細は下記の文科省のページを参照していただいた方が早いですが、簡単に以下にまとめていきます。

1.背景
現行制度では,扶養義務者間(親子間等)で必要の都度支払われる教育資金は贈与税非課税である。しかし,教育については将来にわたり多額の資金が必要であり,「一括贈与」のニーズも高い。
高齢者世代の保有する資産の若い世代への移転を促進することにより,子供の教育資金の早期確保を進め,多様で層の厚い人材育成に資するとともに,教育費の確保に苦心する子育て世代を支援し,経済活性化に寄与することを期待するものである。

ようは安倍政権の経済政策の一環で、高齢者が溜め込んだお金を教育資金として使いましょうよ、ってことです。

2.制度の概要
祖父母(贈与者)は,子・孫(受贈者)名義の金融機関の口座等に,教育資金を一括して拠出。この資金について,子・孫ごとに1,500万円(※)までを非課税とする。
※学校等以外の者に支払われるものについては500万円を限度とする。

というわけで基本的には非課税で孫に1,500万円贈与できるというわけです。普通に1年間に1,500万円を贈与すると贈与税が450万円(20歳以上なら直系尊属なので軽減されて366万円)かかるわけなので、一見ものすごい魅力的に見えます。
ただし、教育資金にしか使えません
塾などの習い事に関しては学校等以外に支払われるものですので500万円までとなります。
ちなみに直系尊属であればよいので子や孫だけでなくひ孫等に使うことも可能です。

さらに細かい条件があり、

・教育資金の使途は,金融機関が領収書等をチェックし,書類を保管。なお,領収書等の提
出手続について一部簡素化(少額支払明細書による提出(平成28年1月1日以降),電磁的記録による提出(平成29年6月1日以降))。
・孫等が30歳に達する日に口座等は終了。
・平成25年4月1日から平成31(2019)年3月31日までの措置

教育資金だとわかる領収書や請求書等を提出しないと引き出すこともできません。使い勝手は悪いです。
また30歳に達する時点で残った分に関してはその残額に対して贈与税がかかります。
期間限定のもので、平成31(2019)年3月31日まででしたが最近になり二年間延長されて令和3(2021)年3月31日まで制度が維持されることが決定されました。

ただし、以下の4点が変更されました。

(1)受贈者の所得要件
信託等をする年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には制度の対象外になることになりました。

(2)教育資金の範囲
受贈者が23歳以上だと学校関連の費用しか認められない

(3)贈与者死亡時の残高への相続税の課税
贈与者の相続開始前3年以内の贈与については、相続開始日(基本的には贈与者が亡くなった日)に受贈者が23歳未満の場合や学生等である場合をのぞき相続財産としてみなされる。

(4)残高に対する贈与税の課税
これまでは受贈者が30歳到達時に残高に対して贈与税が課税されていましたが、30歳の時点で学校等に在学している場合には修了した年の年末の時点の残高に対して贈与税が課税されることになりました。ただし、受贈者が40歳に達した場合には、その時点の残高に対して贈与税を課税されます

これまでの経緯をみていると住宅ローン減税等とならんで自民党政権の間は維持されそうですが、制限が入るので早めにしておいた方が良さそうです。

教育資金とは具体的に何が含まれるのか

これも文科省のページに詳しいです。FAQ(*PDFファイル)も充実しているのでそちらをご参照ください。

(1)学校等に対して直接支払われる次のような金銭

  1. 入学金,授業料,入園料,保育料,施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
  2. 学用品費,修学旅行費,学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など

(2)学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの

<イ 役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>

  1. 教育(学習塾,そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
  2. スポーツ(水泳,野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ,絵画など)その他
    教養の向上のための活動に係る指導への対価など
  3. 3の役務提供又は4の指導で使用する物品の購入に要する金銭

<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>

  1. 2に充てるための金銭であって,学校等が必要と認めたもの
  2. 通学定期券代
  3. 留学渡航費,学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居の際の交通費

以上のように、施設設備費や検定料に加えて、修学旅行費などかなり広範なものが含まれます。
また、習い事の費用や、交通費なども対象となります。ただし、こちらは先ほど書いたように「(2)の学校等以外に対して直接支払われるもの」なので最大で500万円までです。

教育資金贈与信託を使った方が良いケース

まず大前提として(1)相続税を払う必要があるほどの財産があり、かつ(2)自分が死ぬまでの十分な金融資産が確保されている人が対象となります。

(1)相続税を払う必要があるほどの財産がある

元々が減税なので相続税を払う必要のない人はやる必要はありません。当たり前ですね。
相続税自体は相続額だけでなく相続人の人数や配偶者の有無で大きく変わりますので、おおよその相続税額を『相続税』『計算』のようなワードで検索するとでてくるサイトで実際に計算することをおススメします。
相続税額が1,000万円を超えるぐらいのケースから考慮を始めたら良いと思います。相続税率でいうと40%を超えてしまうあたりが分水嶺となるように思います。

(2)被相続人が亡くなるまでの十分な金融資産が確保されている

この制度を利用して教育資金贈与を行ってしまうと、その資金は一括で信託銀行の管理する口座に入ってしまい、簡単には引き出せなくなってしまいます。つまり、後からそのお金が必要になってしまっても使えなくなってしまうのです。このことから私は被相続人が亡くなるまでのあらゆる可能性を考えて、その上での余裕資金の範囲内で行うべきだと考えます。
逆にいえば、例え金融資産が余るほどはなくても、不動産・事業などによって十分なキャッシュフローが今後継続的にあるというケースは、この制度の利用を考慮する価値は十分にあるでしょう。

(3)孫(子)が大きくなるまで生きている可能性が低い

(1)と(2)で有り余る資産があるというケースはためらいなく行って良いと思いますが、ボーダー上の場合は判断のポイントとして被相続人が亡くなるまでの年数もあると思います。こればっかりは正確に予測することは不可能なので、あくまで健康状態や平均寿命からの推測になってしまいますが、重要な条件だと個人的には思います。

まず、この制度のデメリットは「資金が長期間信託銀行に塩漬けになってしまう」ことです。つまりその間、不動産や金融資産としての運用(収益)機会を失ってしまうことになります。この収益の損失が相続税の節税効果を上回ってしまうのならば行う必要はありませんよね。つまり、相続の機会が5年後にやってくるのか、10年後、20年後にやってくるのかでこのバランスというのは大きく変わってきます。

また、孫(子)が大きくなるまで生きていられるケースでは、毎年110万円までの範囲内で贈与税がかからずに贈与できますので、例えば20年間で2,200万円贈与できることになります。このように、この手法でも教育費としては十分な額を贈与できることになります。そもそも教育費が必要になった時にその度に祖父母が直接支払っていれば、冒頭にあるようにそれは贈与にさえなりません。

逆に5年以内に相続が起きる可能性が考えられる場合は1,500万円贈与してしまった方が良いケースが多くなります。

ちなみにこの制度を利用している場合でも、暦年贈与(贈与税の基礎控除額:受贈者1人あたり110万円)も並行して行えるので有り余る資産のある方は併用したら良いでしょう。

被相続人からすると自分の死後も確実に子や孫が十分な教育を受けられるだけの資産を残すことにもつながるため、未成年後見人が自由には使えないという点でも良いのかもしれません。

教育資金贈与信託の開設における注意事項

まず、受贈者(孫等)が学校等に在籍していない限り30歳の誕生日の前日等に預金契約および教育資金管理契約は終了となり口座も解約となります。口座から預金を払い戻し、かつ領収書等の提出がなかった金額および契約終了時における口座の預金残額の合計金額に対してその時点で贈与税がかかります
贈与税がかかるとしても相続税よりは税率が低くなると思いますが、使い切る可能性がある程度の金額で契約を結んでおいた方が良さそうです。ちなみに、金額自体は本制度が継続していればあとから追加することも可能です。
ちなみに、一人の孫等(受益者)に対し、贈与する資金の合計が1,500万円以内であれば複数の祖父母等(委託者)から贈与することも可能です。

次に、契約の終了事由に該当しない場合、原則、受贈者本人からの申し出であっても口座の中途解約はできませんし、贈与が成立しているので祖父母等(委託者)からの払い出しの請求もできません。
このことからも余裕資金で、かつ教育資金として必要な範囲で行う必要があります。

最後ですが、教育資金贈与信託を契約できるのは1金融機関1営業所に限定されています。つまり一度ある銀行で契約した場合は変更したり、解約して別の銀行で新たに契約することはできません。というわけで、どの銀行で開設するのか、というのが大切になってきます。この辺については次の回に書きました。

第二回:教育資金贈与信託:主要銀行サービス比較

おわりに(ぐだおのケース)

私の場合は相続額に関しては莫大ではないのですが、被相続人が高齢だという理由でこの教育資金贈与信託の開設を行おうとしています。私自身が祖父母の兄弟のところに養子にいっているために、私の子供が生まれた時点で養父母は80代なんですよね。子供の保育園代とかもここから出せるみたいなので、来るべき相続時に相続税を払えるように私自身の金融資産を用意しておかなければなりません。その機会ができるだけ先にくることを願いますが、こればっかりは分かりませんからね。あんまりする気もなかったのですが税理士さんに念のためしておいた方が良いと言われ、今回検討してみたわけです。結論からいうと、私はしようと思います。引き出しとかの手続きは面倒だとは思いますが、この辺は年々改善されているように見えるので、気にならない程度の負担になっていくことでしょう。この記事が私のように迷っている人の役に立ちますと幸いです。では。。。

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